結論
押印義務は令和3年9月1日に廃止されましたが、届出の真正は不受理申出(戸籍法第27条の2第3項)、窓口の本人確認(同条第1項)、出頭しなかった人への受理通知(同条第2項)で担保されています。当事務所はこの仕組みを前提に、事務所で届書の原本とご本人を確認したうえで署名します。

怪しいと感じるのは自然なことです
証人代行という言葉を初めて見て、まず疑うのは自然な反応だと思います。届書には氏名、生年月日、住所、本籍が並んでいます。それを会ったことのない人に見せて署名してもらうという話ですから、何かの詐欺ではないかと考えるほうが普通です。
この記事では「安心です」という言い方をしません。代わりに、届出という手続そのものにどういう安全装置が組み込まれているのか、そして当事務所が何をどこまで確認して、何をお断りしているのかを書きます。読んだうえで、頼まないという判断をされても構いません。
調べているうちに不安になる方が多いのは、押印がなくなったという話を目にしたときです。ハンコが不要になったなら、誰でも勝手に届出できてしまうのではないか。まずそこから見ていきます。
ゆき
証人代行って、正直ちょっと怪しく感じます。知らない人に婚姻届を見せるって、大丈夫なんですか。
たすけ
疑うのが普通の反応だと思います。本籍まで書いてある紙ですから。
安心ですとは言いません。何がどう担保されているかを見てから決めていただくほうがいいと思います。
ゆき
担保、というと。
たすけ
届出という手続に組み込まれている仕組みのことです。押印がなくなった後も、勝手な届出が通らないようにする仕掛けが法律に置かれています。
そこから順に見ていきましょう。
押印義務は令和3年9月1日に廃止された
戸籍の届書への押印義務は、令和3年9月1日に廃止されました。根拠はデジタル社会形成整備法(令和3年法律第37号)と、戸籍法施行規則の一部を改正する省令(令和3年法務省令第40号)です。改正以降も、届出人の意向により届書に任意に押印することは可能とされています。
つまり現在の届書は、証人欄も含めて署名だけで足ります。押印がないから不備だと言われることはありません。押したい方は押しても構いません。この点は法務省の戸籍届書の様式変更についての案内に明記されています。
問題は、では押印がなくなった今、届出の真正は何によって守られているのかという点です。ここが分からないままだと、証人代行に限らず届出そのものが不安になります。
ゆき
ハンコがいらなくなったんですよね。だったら、私の名前を勝手に書いて出されてしまうこともあるんじゃないですか。
たすけ
押印義務は令和3年9月1日に廃止されました。そこはそのとおりです。
ただ、押印がなくなったことと、勝手な届出が通ることは別です。押印の代わりに機能している仕組みが、もともと法律に置かれています。
ゆき
ハンコがあった頃も、他人の印鑑を買って押すことはできましたもんね。
たすけ
そのとおりです。三文判で足りていた以上、押印そのものが本人確認の役割を果たしていたわけではありませんでした。
実際に効いているのは、次に説明する3つの仕組みのほうです。
届出の真正を担保している3つの仕組み
押印がなくなっても届出の真正が担保される仕組みとして、法務省は3つを挙げています。ひとつ目は不受理申出です。戸籍法第27条の2第3項に基づき、あらかじめ市区町村に申し出ておくことで、自分が窓口に出頭して本人であることが確認できた場合を除き、届出を受理しないようにできます。
ふたつ目は窓口での本人確認で、戸籍法第27条の2第1項に定めがあります。みっつ目は、届出時に出頭しなかった人への受理通知です。同条第2項に基づき、届出を受理したことがその人へ通知されます。身に覚えのない届出があれば、本人に知らせが届く形になっています。
さらに、虚偽の届出には刑事罰があります。電磁的公正証書原本不実記載罪(刑法第157条第1項)と、虚偽届出罪(戸籍法第134条)です。戸籍に誤った記載がされてしまった場合の訂正手続も、戸籍法第113条から第117条に用意されています。
ゆき
不受理申出って、離婚のときに聞いたことがあります。婚姻届でも使えるんですか。
たすけ
戸籍法第27条の2第3項の仕組みで、あらかじめ申し出ておくと、本人が窓口に出頭して確認できた場合を除いて受理されなくなります。
不安がある方が先に手を打っておける制度です。
ゆき
もし知らないうちに出されてしまったら、気づけないままになりませんか。
たすけ
届出時に出頭しなかった方には、受理したことが通知される仕組みになっています。同条第2項です。
そのうえで虚偽の届出には刑法第157条第1項や戸籍法第134条の罰則があります。押印の有無とは別のところで支えられている、という構図です。
- 不受理申出(戸籍法第27条の2第3項)=本人が出頭して確認できない限り受理させない
- 窓口での本人確認(同条第1項)=届出に来た人が誰かを確かめる
- 出頭しなかった人への受理通知(同条第2項)=身に覚えのない届出に気づける
- 虚偽届出への刑事罰(刑法第157条第1項、戸籍法第134条)
窓口の本人確認が法律上必須な5つの届出
戸籍の窓口での本人確認は、すべての届出で必須というわけではありません。法律上のルールになっているのは、婚姻・協議離婚・養子縁組・養子離縁・認知の5つです。証人代行のご相談があるのは、まさにこの範囲の届出です。
確認に使えるのは、運転免許証、マイナンバーカード、旅券、在留カードなど1枚で足りるものと、年金証書のように2枚以上必要になるものがあります。窓口で本人確認ができなかった場合は、届出人の住所地へ郵便等で受理した旨が通知されます。詳しくは法務省の本人確認についての案内をご覧ください。
つまり、証人が誰であっても、最後に届書を窓口へ持って行くところで届出人本人の確認が入ります。証人代行を使ったからといって、この確認が省かれることはありません。
当事務所が事務所での対面のみにしている理由
当事務所は、浜松市中央区上新屋町の事務所での完全予約制・対面のみで対応しています。来所せずに手続きを進める事業者もありますが、当事務所は事務所での対面のみです。届書の原本とご本人を同じ場で見ないと、確認したことにならないと考えているためです。
当日確認するのは3点です。ご本人であること(顔写真付きの本人確認書類で確認します)、届書が原本であること、そして当事者が届出の内容に合意していること。この3点が確認できたうえで、証人欄に署名します。
署名するのは証人欄だけです。届出人の欄や本籍・氏名など、ご本人が書く部分に代わりに記入することはありません。証人欄の代筆についても線引きがあるので、別の記事で扱っています。
ゆき
来所しなくても済むところもあるみたいなんですけど、そのほうが楽ですよね。わざわざ会う意味ってあるんですか。
たすけ
楽なのは確かだと思います。当事務所は事務所での対面のみにしています。
理由は、届書の原本と、それを持ってきた方が同じ人かどうかを、見ないと確かめようがないからです。
ゆき
写真を送るのでは足りませんか。
たすけ
写真では、原本かどうかも、送ってきた方がご本人かどうかも分かりません。
確認できないまま署名すると、証人という立場の意味がなくなってしまいます。それは頼む側にとっても安全ではありません。
行政書士には守秘義務があります
行政書士には、行政書士法で守秘義務が定められています。正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らしてはならず、この義務は行政書士でなくなった後も続きます。届書に書かれている本籍や、来所時に伺った内容を外部に話すことはありません。
そのうえで、そもそも必要以上のことを伺わない運用にしています。なぜ証人を頼める人がいないのか、家族とどういう関係なのか、離婚に至った経緯はどうか。こうしたことは対応の判断に必要ないので、お話しいただかなくて構いません。
予約前のLINEでやりとりする内容も、届出の種類・必要な証人の人数・希望日時が中心です。氏名や電話番号、LINEの会話内容をサイトのアクセス計測に含めることはありません。
ゆき
離婚のことを人に知られたくないんです。事務所で話したことが、どこかに出ることはありませんか。
たすけ
知られたくないというお気持ちは、離婚届のご相談ではほとんどの方が持っています。
行政書士法に守秘義務の定めがあり、行政書士でなくなった後も続きます。伺ったことを外に出すことはありません。
ゆき
事情を聞かれること自体がつらいのですが。
たすけ
伺いません。経緯や理由は対応の判断に必要ないので、お話しいただかなくて大丈夫です。
確認するのは、届書の状態、ご本人であること、当事者が合意していることの3点だけです。
お断りする場合を先に書いておきます
すべてのご相談をお受けできるわけではありません。お断りするのは主に次の場合です。届出について当事者の合意がない場合、ご本人が来所できない場合、届書の原本がない場合、そして当日の確認で前提が満たせないと分かった場合です。
とくに協議離婚届については、相手方が離婚に合意していることが前提です。相手に知らせずに届書を完成させたい、というご相談はお受けしていません。同じく、ご本人の代わりに来られた方だけで署名まで進めることもできません。
これは記事の見栄えを良くするために書いているのではなく、予約してから当日お断りする事態を避けるためです。あてはまりそうな場合は、予約前のLINEの段階でお知らせください。その時点で判断してお伝えします。
来所前のチェック
- 当事者が届出の内容に合意しているか確認する
- 届書の原本を持って来所できるか確認する
- 顔写真付きの本人確認書類を用意する
- 不安があれば提出先の不受理申出の案内も確認する
- 対応してほしくない範囲があれば予約前に伝える
よくある質問
押印がなくなったなら、勝手に届出されてしまいませんか?
押印義務は令和3年9月1日に廃止されましたが、不受理申出(戸籍法第27条の2第3項)、窓口での本人確認(同条第1項)、出頭しなかった人への受理通知(同条第2項)が届出の真正を担保しています。虚偽の届出には刑法第157条第1項と戸籍法第134条の罰則があります。
窓口では必ず本人確認がありますか?
婚姻・協議離婚・養子縁組・養子離縁・認知の5つの届出については、窓口に来た人の本人確認を行うことが法律上のルールになっています。確認できなかった場合は届出人の住所地へ受理の通知が届きます。
届書を見せることに抵抗があります。どこまで見られますか?
確認するのは、証人欄が空いているか、届書として体裁が整っているか、原本かどうかという点です。記載内容そのものを詮索することは目的にしていません。
相談した内容が外に漏れることはありませんか?
行政書士には行政書士法で守秘義務が定められており、行政書士でなくなった後も続きます。また、対応の判断に必要のない経緯や理由は伺わない運用にしています。
来所せずにお願いすることはできますか?
できません。当事務所は浜松市中央区の事務所での対面のみ・完全予約制です。届書の原本とご本人を同じ場で確認できない形では署名しません。
断られることはありますか?
あります。当事者が届出の内容に合意していない場合、ご本人が来所できない場合、届書の原本がない場合はお受けできません。予約前のLINEで分かる範囲はその時点でお伝えします。


